気象情報の見方と使い方
野尻英一
さて、前回まで東シナ海付近で発生し発達しながら東進する低気圧と、上空に寒気をもつ油断禁物の小さな低気圧を紹介しました。今回は高気圧です。高気圧は天気がよいと言われていますが、果たしてそれだけなのか、少し詳しく見てみましょう。


高気圧にもいろいろ種類がありますが、日本に主に影響するのは、太平洋高気圧、シベリア高気圧、オホーツク海高気圧、移動性高気圧の4つです。この4つの高気圧が分かれば、気象に詳しい人といえるでしょう。太平洋高気圧は、昔は小笠原高気圧とも言いましたが、ハワイ付近に中心をもち、夏には日本付近まで広く張り出してくる高気圧で、安定していると夏空が望めます。

シベリア高気圧は、冬季にシベリアからモンゴル付近にできる高気圧で、冬の季節風をもたらします。オホーツク海高気圧は、春から夏にかけて北海道の東からオホーツク海に中心をもち、関東から東の太平洋側に悪天もたらす高気圧。移動性高気圧は、秋から冬、春に、アジア大陸から東に移動してくる高気圧です。このように高気圧はそれぞれの季節を特徴づけるものでもあります。

同じ高気圧と言っても、実は立体構造が結構違います。上図(1月14日)はシベリア高気圧、下図(7月17日)は太平洋高気圧ですが、見た感じもだいぶ違いますよね。シベリア高気圧は中心気圧も高く、等圧線も多くしまって見えますが、太平洋高気圧は気圧も低く、ゆるい感じがします。だからと言って、太平洋高気圧はシベリア高気圧より弱いということではなく、高気圧の成り立ちや構造が違うのです。

高層天気図をみるとよく分かるのですが、シベリア高気圧は実は背が低く、たいてい上空3000メートルくらい上がると、高気圧だとはほとんど認識できなくなってしまいますが、太平洋高気圧は上空1万メートルを超えても依然高気圧になっています。詳しい説明は省きますが、例えてみれば、シベリア高気圧は平屋建で屋根の上を気圧の谷が通れるのに対して、太平洋高気圧はてっぺんに重石を載せた背の高い圧力容器になるでしょう。オホーツク海高気圧や移動性高気圧にもいろいろな構造のものがあり、その構造の違いが天気にも当然影響してきます。

そのことも頭に置いてまず太平洋高気圧から。高気圧の上空の重石が、下の大気が不安定になるのを抑えていますが、その重石の重さが変わったり、重石に隙間ができたり、位置がずれたりすると、高気圧の安定度が変わってしまいます。それが、夏の天気変化をもたらす要因のひとつになります。天気図での太平洋高気圧の見方は、昨年の7月号でも取り上げましたが、今回の下図を改めて見てください。日本列島は、東海上から張り出す太平洋高気圧本体と、日本海西部の高気圧に覆われて、安定しているように見えますが、実はそうでもなかったのです。詳しくは次号で。(気象予報士)

戻る