岩場の環境整備活動レポート
北六甲駒形岩でリボルティング
山岡人志 (兵庫/地球クラブ)
6月に北六甲の駒形岩で2回目の「ボルト打ち替え」をおこない、これで駒形岩の「危なそうなルート」の整備をほぼ終えることができた。このときは、岩と雪の会こぶし(兵庫県連盟)の会員を中心に、私とOCSの林照茂氏が加わって取り組んだ。整備状況の報告は、各種のメイリングリストやJFA(日本フリークライミング協会)の会誌に掲載されている。

ボルトの打ち替えとは、ルート上の老朽化したボルトや危険な位置のボルトを打ち直していくもので、終了点の整備も含まれる。ただし、闇雲に新しいボルトに取り換えているわけではない。「初登攀者尊重の原則」を貫き、作業はオリジナルのルートが変質しないようにおこなうのである。例えば、ボルトが遠くても、非常に危険でない限りボルトの位置を大きくずらすようなことはしない。何人かでルートを何度も登り、ルートをつくった人の意志をくもうとする。終了点は立ち込んで終了なのか、そうでないのかまで考える。トップロープ用に終了点を動かしたり、途中に支点を追加するようなこともしない。

さて、このプロジェクトは、ゲレンデの環境整備、安全確保のために、昨年の4月に、私が提唱するかたちで、団体の枠を越えたボランティアの有志によってはじめられた。苦労ばかり多い作業であるが、数年かけて、ゆっくりと兵庫周辺の岩場を整備していこうと考えている。

駒形岩での1回目の作業は昨年6月におこなった。このときはJFAスタッフに関東から来てもらい、初日には「ボルト打ち替え講習会」もおこなった。プロジェクト立ち上げ時点では知らなかったのだが、すでにJFAは関東地区で岩場環境整備に取り組んでいた。JFAとOCSからは打ち替えに必要な資材の無償提供を受け、講習会講師派遣旅費は兵庫県連盟教育研究委員会が負担した。隣接する烏帽子岩をひとりで整備していた林氏とは、このときから協同しており、資材も無償で提供していただいている。

ボルトの打ち替えは、じっくり取り組まなければならない。一度整備し、その情報を公開して、まわりの反応を見るのも大事だと考えている。岩場はクライマーの共有財産でもあると思うからである。また、岩場は個人の所有地であることが多く、立ち入り禁止という最悪の事態にならないためにも、その利用にはマナーが必要だと思う。トイレやゴミ問題はもちろんであるが、重大事故が起きれば、すぐに岩場の閉鎖ということにもなりかねない。我々の岩場の環境整備が、よりよい岩場の利用につながればと思っている。

この岩場の環境整備はだんだんと全国にひろまりはじめている。まだまだ多くの年月がかかるだろうが、地道で忍耐強い作業が必要だろう。さらには、この作業の延長線上には、アルパインクライミングルートの再生という問題が出てくるだろう。これは、登山界全体の問題であり、各団体の枠を越えて、いまからどうしていくか話し合いをしていくべき時期にきていると思う。


[写真キャプション] (写真/松本仁)
上:資材を囲んで打ち合わせるプロジェクト・メンバー。座ってこちらを向いているのが林さん。
下:抜いたボルト類やハンガー類。右のふたつが、新たに打ち込んだボルトとケミカルアンカー。

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