News

自然保護憲章(最終案)
 登山は、自然と関わりが深い「スポーツ・レクリエーション」であり、豊かで多様な 自然の中で発展してきました。山岳自然は人為に対して極めてぜい弱であり、一度破壊 されると容易に復元しない特性があります。ところが近年、山岳自然の荒廃がめだち、 登山文化がそこなわれる情況が生まれています。  日本勤労者山岳連盟(労山)は創立(1960年)以来、登山者の使命として自然保護問題 に正面から取り組み、各地で自然を破壊し登山を阻害する開発に反対してきました。また、 「山からゴミを一掃しよう」と取り組んだクリーンハイク運動は、登山者のモラルを高め、 世論を動かし、山のゴミは著しく少なくなってきました。  かつて山岳自然保護の主な課題は乱開発から自然を守ることにありました。しかし、今や オーバーユース等の利用者自身による問題や、地球温暖化、酸性雨・霧など地域・国境を 越えた地球規模の環境問題も重視されるようになり、自然を汚染・破壊する原因は多様・ 複雑になってきました。  そこで私たちは、登山文化の継承発展と、山岳自然と登山者との新しい共存をめざし、 ここに「労山自然保護憲章」を定めます。 1 登山活動を通して、自然を見る目をやしない、自然の変化をとらえ、山と地球規模の   環境保全に寄与します。 2 山を汚さず、山をいためず、傷つけた山を復元する努力は登山者の務めです。環境へ   の影響を最小限にするため、「自然を傷つけない登山技術」を求め普及していきます。 3 多数が同時に行動する集団登山は自然への負担が大きいので、自然を傷つけないように   創意工夫して取り組みます。 4 山岳での開発動向に関心を持ち、利便性にかたよることなく、事実にもとづいた判断で   自然がそこなわれないよう努めます。 5 クリーンハイク運動に参加し、登山者のモラルを高め、山からゴミを一掃します。   そこでつちかった力で、さらに多面的な自然保護活動を広げていきます。 6 山を汚染しない排泄物の処理方法や自然環境に配慮した山小屋やトイレを考え、山域に   ふさわしい対策の実現をめざします。 7 自分の好きな山「心のふるさとの山」を持ち、山の自然を学び、地域との交流や山麓の   文化に触れるなど、自らの登山スタイルをめざします。 8 登山道、山小屋など施設整備は、自然への負担を最小限にとどめることが大切です。   それらの設置・運営にあたっては、国や自治体、住民や所有者、登山者の合意形成を   求めていきます。 9 住民や利用者の声を無視した「入山規制」、「入山料」ではなく、その声を生かした   自然の保全管理を進めるよう国や自治体、所有者に求めていきます。                         2006年2月 日 日本勤労者山岳連盟